市販のチョコレートの原材料欄に「植物油脂」と書かれているものもありますよね。
どうして植物油脂がはいっているのでしょう?
カカオの脂肪分(カカオバター)だけではだめなのでしょうか?
その疑問に答えるために、「植物油脂」とは何かというところから、チョコレートによく利用される植物油脂の種類と役割についてお伝えします。
植物油脂とは?
植物油脂とは「植物に含まれる脂質を抽出・精製した油」のこと。
特に、常温で液状のものを「植物油(しょくぶつゆ)」、固体のものを「植物脂(しょくぶつし)」と分類する場合もあります。
- 植物油 主な原料はナタネや大豆、ひまわりや米ぬかなど
- 植物脂 主な原料はアブラヤシの果肉や種子、ココヤシの実など
植物脂はあまり馴染みがないかもしれませんが、植物油は普段料理で使うサラダ油をイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。
そして、チョコレートの製造に利用されるのは主に植物脂のほうです。
植物油脂には、常温で液体か、固体かで2種類に分けられるんですね。
植物油脂について少し分かってきたところ、お次はチョコレートに利用される植物油脂についてみていきましょう。
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チョコレートに利用される植物油脂は?
チョコレートの製造に主に利用されている植物油脂は、大きく分けて①ココアバター類似脂、②ココアバター改良脂、③ラウリン酸系油脂、④トランス酸系油脂の4種類が存在します。
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
ココアバター類似脂
ココアバター類似脂は「シア脂」や「サル脂」などを原料として作られています。
これらの油脂は、チョコレートの原料であるカカオマスから抽出される油脂(=ココアバター)とほぼ同じ脂肪酸組成を持っています。
そのため、ココアバターの代替品として使用することができるのです。
さらに、ココアバターと同等の特徴を持ち、かつ工業的に生産されているものなので天然物であるココアバターよりも安価で供給が可能という利点も。
チョコレートを安く、大量に生産するためにはココアバター類似脂の存在が不可欠と言えるでしょう。
ココアバター改良脂
ココアバター改良脂は、脂の脂肪酸組成を変えることで融点などを調整し、ココアバターにはない付加価値を付けた油脂です。
(融点とは、簡単に言うと溶ける温度です。)
少し難しい話をすると、脂が持つ脂肪酸組成をいじることでその脂の融点をコントロールすることができるんです。
通常のココアバターの融点が約34℃なのに対し、ココアバター改良脂には融点が36℃以上の高融点油脂や逆に融点が32℃程度といった低融点油脂も存在します。
(要は高めの温度でないと溶けないものや、低めの温度でも溶けるという性質があるんです)
ちなみに高融点油脂は、クッキーやパン生地に混ぜ込んで焼成するような焼成タイプの用途のチョコレートに使用されることが多いです。
(融点が高い=溶けにくい=焼き菓子につかいやすい)
チョコチップクッキーに入っているチョコチップをイメージすると分かりやすいと思います。
また反対に、低融点油脂はチルドケーキのトッピングなどの用途に使用するチョコレートに多く使用されています。
(融点が低い=溶けやすい=冷やした状態でも口溶けがいい)
チョコレートの溶けにくさ、溶けやすさをコントロールできるというわけですね。
ラウリン酸系油脂
ラウリン酸系油脂は、テンパリングが不要の油脂です。
口どけがよく、酸化に対して安定という特徴を持っています。
しかし、相溶性(※1)が低く加水分解しやすいため、ドーナツなどの比較的短い賞味期限を設定するようなお菓子へのコーティングで多く使用されています。
(※1)相溶性・・・ココアバターとのなじみやすさ。油脂の構造が似ているものほど相溶性は高い。相溶性が低いとブルーム発生の原因になる。
より口溶けの良いチョコレートが作れる半面、長時間保存するには向かないようですね。
トランス酸系油脂
トランス酸系油脂も、ラウリン酸系油脂と同様にテンパリングが不要な油脂です。
比較的安定性があるので、クッキーなどの日持ち菓子のコーティングにはトランス酸系油脂の使用が適していると言われています。
しかし、トランス酸系油脂は精製の際の副産物としてトランス脂肪酸を生成するため、トランス酸問題(※2)によって敬遠されがちな油とも言われています。
(※2)トランス酸問題・・・自然界に存在しないトランス酸は多量に摂取すると血中の悪玉コレステロール値を上昇させるとして、北米ではトランス酸量表示が義務付けられています。
日本ではそこまで敬遠されていませんが、アメリカではトランス脂肪酸の使用制限が話題になることもあります。
チョコレートの美しさ、美味しさを長く保てる一方で、健康にマイナスになる可能性があるんですね。
チョコレートには、用途に応じて様々な植物油脂が使われていることがわかりました。
チョコレートケーキを作るときに、クーベルチュールチョコレートでコーティングを成功させるのはなかなか難しいですよね。
そんな時には、コーティング用のチョコレートを使うと失敗なくツヤツヤのチョコレートケーキができますよ。
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まとめ
今回は「植物油脂はチョコレートに必要?」と題してお伝えしました。
植物油脂は工業的に精製されたものなので「私は健康志向だから、口に入れるものは全て天然物じゃないとダメ!」という考えの人にとっては好ましくないものに区別される時もあるでしょう。
しかし今回植物油脂に関して調べてみて、ココアバター類似脂を始めとしたチョコレートに使用されている植物油脂には「ココアバターだけでは作り出すことができないチョコレート」を作ることができることが分かりました。
ココアバターにない機能性を付与したり、価格にメリットがあったり、といったことですね。
確かに、特にトランス酸系油脂に関してはトランス酸問題で騒がれることもありますが、個人的には「チョコレートの可能性を広げる」という点では植物油脂の使用は有効なのではないかなと感じています。
植物油脂のメリット、デメリットを考えた上で、上手にチョコレートを選べるといいですね!
それでは、コメントおお待ちしております。
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